ウェブ関連書 / ウェブサイト制作
Web制作現場の憂鬱—僕の出会ったフシギな人たち - 門出 明 著(技術評論社、2007年1月)
おもしろくて、一気に読んでしまった。著者はWeb製作現場の人間。その周りに棲息するさまざまなタイプの人間の観察記録ともいうべき本。ぼくにもちょっと耳が痛い話がないではないが、おおむね賛同することが多かった。
以下はちょっと長いけど著者の自己紹介。
「そうそう、自己紹介です。僕は、コンピュータ関連業界では15年くらい仕事をしています。あわせてWeb製作関連の現場の仕事もやってきました。やっているうちにWebのほうがメインになってきて、そろそろ10年くらいになります。この業界で会社を変えるのは別に珍しいことではありません。ちょっと大きめな IT企業で勤めていたころもありますし、SOHOでフリーランスとして働いたり、いろいろ経験してきました。おかげでWeb製作に関しては、ひととおりのことをこなせます。CSSでのデザインを含むHTMLコーディングからWebマーケティングまで・・・一言で僕のスタンスを表せば『Web何でも屋』です。現在(あの当時)は中堅どころのIT・Web製作会社の企画開発部に籍を置いています。僕の仕事は、プロジェクトの運営とウェブディレクション、とはいえ――いつも人手が足らないので――現場で製作もしてしまうということが多いですね。まぁ、この業界にはよくあることです。ラフデザインから ActionScriptのプログラミングも入ったフラッシュ製作まで何でもやります。」(p2-3)
ということですが、ぼくも一人で何でもやってしまう・・・というか一人でできることしかやらないスタンスでWeb制作をやってます。ぼくのスキルは著者より、かなり落ちるので、著者をとても尊敬してしまいます。
本書はWeb制作に携わる人、その周辺の人々には必読の書だと思う。辛口のせいで反発したい気持ちが生じるけど、ここには真実があると思う。著者の体験をスケールダウンしたら、ぼくの体験とも重なる。著者はドクターストップがかかって、1週間の入院をしたそうだが、ぼくは3日の検査入院ですんだ。こんな風にぼくはすべての点で小粒だ。だから、著者のような人が居ることに勇気づけられる。また、具体的に役立つ情報も散らばっているので、Webデザインの良書であることは間違いないと思う。
《ぼくの場合》は・・・
専属の外注スタッフとして常勤していたデザイン事務所で、6、7年前にWeb制作部門の立ち上げに参加。HTMLを知らない部門のトップがアートディレクターも兼任。ほか、プランナーもコピーライターもHTMLを知らなかったから、日々地獄を見た。長時間なだけで成果のあがらない会議につぐ会議、理不尽な修正作業での徹夜につぐ、徹夜。困るのは社内スタッフだけではなく、有名広告代理店の営業や有名企業の広報担当者がこぞって、Webと印刷物の間の境界を意識せずに、夢物語のような妄想をサイトに抱いていたこと。それをカタチにすることのストレスたるや、大変なものだった。思い出すのもいやだったけど、本書を読んでいたら鮮明によみがえってしまった。
3日間の検査入院後は、はっきりとものを言うようにしたら、大きなプロジェクトからはずされ、何件かの個人商店レベルのサイトを一人で担当することになった。パソコンの設定や、ウイルス騒ぎで呼びつけられたりと、制作の打ち合わせ以外で出向くことも多かったが、個人商店や小規模企業では経営者もしくは、重役がWebサイトの担当者で、なんでも即決というのが爽快だった。社内や代理店の営業に振り回されることもなく、はればれとした気持ちで仕事をした。ただ、大きなサイトに関わることもないので、スキルを学ぶ機会に限界がある。それはしかたがないとあきらめた。細々とでも自分でスキルを高めるしかない。
そうこうしているうちに、社長はWeb制作部門の強化にかかり、専門学校を卒業した若い制作者が続々と入社してきた。ぼくの方には、以前やっていたDTP部門の仕事が回ってくるようなった。 Webの何でも屋ならいいけど、WebとDTPの何でも屋というのは無理がある。専属スタッフを辞めてフリーランスになった。
本書ではWeb制作者向きの人間を以下のように言っている。
「『新しいことが好き!』とか、『最新技術にワクワクする!』という『変化を好む』タイプでないと、Web業界に長くいるのはつらいかもしれません。(中略)妙に古いものに固執するタイプの方が厳しいかもしれません。逆に適宜に飽きっぽいくらいのほうがいいのかもしれません。」(p109)
この点で、ぼくにはぴったりの職種だと思ってる。変化の波にのる醍醐味はけっこう快感です。若い人に仕事を尋ねられて、フリーランスのWeb制作者だというと、うらやましがられることが多い。彼らは、ぼくが土日はもちろん、盆も正月も連休も仕事がなくても、勉強のためにコンピュータの前に座りっぱなしということを知らないからね。これだけやってもスキルは微々たるもの。変化が早すぎる・・・。
もう一度言うけど、本書を読んだらWeb制作を続ける勇気がわいてくる。
(2007年3月31日記)

